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『圓運動的古中医学』 中国中医薬出版社 2007年

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中医学では、人体を取り巻く環境をとても重視しています。
季節が変われば、環境も変化し、人体もそれに呼応して変化する。
その時に、人体がうまく環境の変化に対応できなかったり、
環境の変化が急激だったりすると、体に異変が起こり、病気になるということになります。

人体が自然界から影響を受けるというのは、
中医学を学ぶ上で、何度も何度も聞かされる話ではあるのですが、
では、それをどのように臨床に用いるのかというと、
理論的な話はたくさんあるものの、具体的にどう応用すればよいのかが書いてある本は少ない気がします。
(と偉そうに書きましたが、実際には結構あるかもしれません。)

ここで紹介する『圓運動的古中医学』(2007年中国中医薬出版社)は、
清代末期~民国初期の医家である彭子益の著『実験系統古中医学』を
著名な老中医である李可老師が校正し出版に至った書です。

本書は自然界において普段どのような運動が起こっているのか
(具体的には陽気の浮沈)を説明し、
それと人体・陰陽・五行・六気・臓腑・十二経などが、
どのように関連しているのかを図を用いて
分かりやすく説明する所から始まっています。

そして、それらをベースに、
傷寒・金匱・温病の代表的な方剤の解析を行っています。
例えば、麻黄湯の解釈は次のような感じです。

麻黄湯は栄衛*1が寒邪を外感し、
項の強ばり、頭痛、身体痛、関節痛、無汗悪寒、脈浮緊といった症状が見られる者を治療する。
これは、栄衛証の収斂に偏った病*2を治療するための法である。
寒とは空気中の収斂の気である。
衛とは人体の収斂の気である。
収斂によって悪寒が生じ、収斂によって無汗となる。
また収斂によって脈緊となる。緊とは収斂閉塞を意味する。
栄衛は身体の表をめぐっているため、栄衛の病では脈浮となる。
栄傷衛鬱となって栄衛不和となると、項の強ばり、頭痛身痛、関節痛などが現れる。
寒邪は衛気を傷づけず栄気を傷つける。これは栄気の性質が疏泄であり、寒気とは性質が異なるためである。

寒気によって傷つけられるのは栄であるが、病は衛にある。
これは寒気が栄を傷つけ衛が病んだ状態とは、
栄気の疏泄作用が低下し、衛気の収斂作用が強くなった状態であるからである。
収斂が強すぎれば鬱滞し、鬱滞すれば病となる。

麻黄湯では麻黄を用いて衛気を泄す。
衛気の収斂は栄気と交わることを主とする*3
桂枝には表陽を益する作用があり、桂枝を用いることで栄衛を調える。
衛気が鬱滞してくると、円運動*4が損なわれ、
円運動が損なわれると、中気は必ず虚す。故に炙甘草を用いて中気を補う。
衛気が閉塞すると肺の気逆を引き起こして喘息が現れる。
これに対し、降肺逆の作用をもつ杏仁を用いる。
自汗の症状がないのは、中気と津液がまだ傷ついていないことを示しており、
したがって、生姜・大棗は用いず、熱粥も服用しない。
麻黄湯を服用し、中気が復活すれば栄衛のバランスも整う。
ゆえに汗が出て病が緩解する。
本症では項部の強ばり、身痛の症状が桂枝湯証よりも顕著である。
これは衛気が閉塞しているためである。

訳が下手でよくわからない部分もあるかと思いますが、
人体における陽気の昇降、即ち気機の理解が進むと、
治療を行う上では、非常に大きな助けとなるというのは
実感しております。もちろん鍼灸治療でも!

というわけで、おすすめの一冊です。


*1 栄衛:営衛と同義。営(本来は營)を栄(本来は滎)としている文は『素問』逆調論や『素問』痺論などに見られる。

*2 収斂に偏った病:本書では衛気と営気に関して次のような解釈を行っている。
宇宙において、膨張と収縮の力が合わさると円運動する大気体が形成される。これは開と合の作用を内包する。
開の作用とは疏泄であり、合の作用とは収斂である。
疏泄は風を生じ、収斂は寒を生ずる
疏泄によって発熱し、収斂によって悪寒する。
疏泄を栄と呼び、収斂を衛と呼ぶ。
疏泄とは木火の気であり、
収斂とは金水の気である。
木火の気は内から外へ向かい、発栄(草木が生い茂る)の意味から栄と称される。
金水の気は外から内へ向かい、護衛の意味から衛と称される。
栄衛とは、身体全体における円運動の気の呼称である。
全体の円運動が分離し、疏泄に偏れば栄病となり、収斂に偏れば衛病となる。
分離していたものが復合し、栄衛が互いに交わり、全体の円運動が回復すると、発汗して病が癒える。
栄衛が風寒によって傷つけられると栄衛が分離し、小さく分離すると病は軽く、大きく分離すると病は重くなる。

*3 衛気の収斂は栄気と交わることを主とする:原書記載は「衛気之収斂以交栄気為主」。衛気の収斂とは本来は栄気と交わるための作用であるといった意味であろうか。

*4 運動が円でなくなる:「円運動」に関しては「*2」を参照。

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