『経脈病候の針灸治療』翻訳後記3
翻訳書『経脈病候の針灸治療』後記3

翻訳書『経脈病候の針灸治療』後記
2020年に東洋学術出版社から出版された『経脈病候の針灸治療』の翻訳を務めさせていただいた。
出版後、改めて本書を読み返すと、気になる部分や残しておきたい考察内容などがあることに気が付いた。
そういった内容を記録の意味も込めて時々記載していきたい。
十二経見証
本書に引用されている古典原文の中で、個人的に、目下、一番臨床に役立っていると思えるのが、『丹渓心法』に収録されている「十二経見証」。
経脈病候というと最初に挙げられるのはやはり『霊枢』経脈篇にある「是動病」・「所生病」であり、それらももちろん臨床上参考にはしているのだが、十二経見証のほうがより臨床に近い気がするのである。
例えば、「十二経見証」の足陽明胃経見証は以下のような記載となっている。
「悪人與火 聞木音則驚 狂 上登而歌 棄衣而走 顔黒 不能言 脣腫 嘔 呵欠 消谷善飲 頚腫 膺乳気街股伏兎胻外廉足跗皆痛 胸傍過乳痛 口喎 腹大水腫 奔響腹脹 跗内廉腑痛 髀不可転 膕似結 腨似裂 膝臏腫痛 遺溺矢気 善伸数欠 癲疾 湿浸 心欲動則閉戸独処 驚 身前熱身後寒慄」
このうち「髀不可転 膕似結 腨似裂」は『霊枢』経脈篇では膀胱経の所生病にほぼ同様の記載のある病候である。病位から考えても膀胱経の病候とするのは妥当だと考えられる。
しかしながら、私自身、坐骨神経痛や脊柱管狭窄症、あるいはそれらを原因としていると思われる膝痛・下腿痛・足底痛などに対しては膀胱経を用いるよりも胃経を用いた方が効果が高いと感じている。そのため、「髀不可転 膕似結 腨似裂」が胃経の病候として記載されていることに対しては、非常に共感を覚えるのである。
朱丹渓は臨床の人であるという。実際の臨床を通じて得た知見を残してもらえるのは後代の者としてはありがたい限りである。しかも、その内容が『霊枢』経脈篇と比較するうえで近すぎず、遠すぎずな内容であるため、なおさら検討・追試してみたくなるのである。

翻訳書『経脈病候の針灸治療』後記
2020年に東洋学術出版社から出版された『経脈病候の針灸治療』の翻訳を務めさせていただいた。
出版後、改めて本書を読み返すと、気になる部分や残しておきたい考察内容などがあることに気が付いた。
そういった内容を記録の意味も込めて時々記載していきたい。
十二経見証
本書に引用されている古典原文の中で、個人的に、目下、一番臨床に役立っていると思えるのが、『丹渓心法』に収録されている「十二経見証」。
経脈病候というと最初に挙げられるのはやはり『霊枢』経脈篇にある「是動病」・「所生病」であり、それらももちろん臨床上参考にはしているのだが、十二経見証のほうがより臨床に近い気がするのである。
例えば、「十二経見証」の足陽明胃経見証は以下のような記載となっている。
「悪人與火 聞木音則驚 狂 上登而歌 棄衣而走 顔黒 不能言 脣腫 嘔 呵欠 消谷善飲 頚腫 膺乳気街股伏兎胻外廉足跗皆痛 胸傍過乳痛 口喎 腹大水腫 奔響腹脹 跗内廉腑痛 髀不可転 膕似結 腨似裂 膝臏腫痛 遺溺矢気 善伸数欠 癲疾 湿浸 心欲動則閉戸独処 驚 身前熱身後寒慄」
このうち「髀不可転 膕似結 腨似裂」は『霊枢』経脈篇では膀胱経の所生病にほぼ同様の記載のある病候である。病位から考えても膀胱経の病候とするのは妥当だと考えられる。
しかしながら、私自身、坐骨神経痛や脊柱管狭窄症、あるいはそれらを原因としていると思われる膝痛・下腿痛・足底痛などに対しては膀胱経を用いるよりも胃経を用いた方が効果が高いと感じている。そのため、「髀不可転 膕似結 腨似裂」が胃経の病候として記載されていることに対しては、非常に共感を覚えるのである。
朱丹渓は臨床の人であるという。実際の臨床を通じて得た知見を残してもらえるのは後代の者としてはありがたい限りである。しかも、その内容が『霊枢』経脈篇と比較するうえで近すぎず、遠すぎずな内容であるため、なおさら検討・追試してみたくなるのである。
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